フランス西部の世界遺産

フランスにはヨーロッパの中でも特にキリスト教関連の世界遺産が多い地域だとされています。

「キリスト教関連ってことは教会とかそういう場所が多いってこと?」

と考えた方がほとんどかと思いますが、実際のところ、フランスにある世界遺産は「教会」という形とは少々異なります。

まず、フランスの世界遺産として登録されている教会は、もはや教会と呼ぶのはふさわしくないのではないかと思うほど巨大で豪勢です。

たとえば、この国にはキリスト教の教えをより深く伝える為にあえて豪勢に築かれた施設が多く現存しています。

豪勢に造られた教会施設のそのほとんどは歴史に深くその名を刻む「修道院」や「大聖堂」であるのですが、これらのゴシック様式の建物は現代の人の目から見ても信じられないような完成度を誇っているのが特徴です。

サン=サヴァン・シュル・ガルタンプ修道院付属教会

サン・サヴァン・シュル・ガルタンプ修道院付属教会

「サン・サヴァン・シュル・ガルタンプ修道院附属教会」は、フランス中央部、ポワトゥー・シャラント地方の村サン・サヴァンにある、ロマネスク様式の聖堂です。この聖堂は、1983年に、世界遺産に登録されました。サン・サヴァン・シュル・ガルタンプ教会は、その保存状態の良い壁画36点が特に有名で、世界遺産に登録されたのを機に、1990年には「国際壁画センター」を併設しました。ロマネスク建築及び芸術に興味のある人には必見の教会です。尚、1983年の世界遺産認定当時は、この物件は「サン・サヴァン・シュル・ガルタンプ教会」の名前で登録されていましたが、2006年には現在の「サン・サヴァン・シュル・ガルタンプ修道院付属教会」に登録名が変更されています。

サン・サヴァン・シュル・ガルタンプ教会の前身となったのは、811年にカール大帝が建設した修道院です。その修道院は、9世紀後半に、戦争によって壊滅しました。その後11世紀に、ロマネスク様式の聖堂に改修され、現在に至ります。聖堂内部の壁画が完成したのは、1100年頃のことです。「ロマネスク建築」とは、「ゴシック建築」が流行る前にフランスをはじめとした各国で採用されていた建築様式で、現在まで残るには、多くの戦乱の時代と共に生きなければなりませんでした。その中で、サン・サヴァン・シュル・ガルタンプ教会も、16世紀には宗教戦争により、一度破壊されています。

そして17世紀に修復作業に入るも、今度はフランス革命による大打撃を受けることになりました。しかし、17世紀の修復時に、壁画は塗りつぶされていたため、難を免れたのです。革命後の修復作業の際に、塗りつぶした壁を剥がす作業が始まると、みるみるうちに壁画は蘇りました。こうして、サン・サヴァン・シュル・ガルダンプ教会が誇る壁画は、ロマネスク建築に生まれ変わった当時のまま、私たちの目の前に現れたのです。1960年には、文化相のアンドレ・マルローが聖堂修復作業の際、見事に修復された壁画を見て思わず感極まり、「フランス、ここに始まる!」と叫んだといいます。

サン・サヴァン・シュル・ガルダンプ教会最大の見どころである壁画は、どれも誰の作品なのかが明らかになっていないのですが、ロマネスク芸術を代表すると言っても過言ではないくらいに、見事な美しさを誇っています。身廊内部の天井に描かれた壮大な聖書に纏わる壁画は特に圧巻で、「ロマネスク美術のシスティーナ礼拝堂」(システィーナ礼拝堂:ルネサンス芸術を代表する教会の一つ)とも言われています。

900年もの時を経て、今尚聖堂内にある壁画は色あせずに輝き続けています。ロマネスク芸術を体感するには最もお勧めの聖堂です。